歯科矯正用アンカースクリュー講義。

医師・歯科医師向け

日本歯科大学附属病院 矯正歯科レジデント1・2年目を対象に歯科矯正用アンカースクリューガイドライン第2版を習得するための講義を2023年1月30日~31日の2日間で講義を行いました。

歯科矯正用アンカースクリューガイドライン第2版https://www.jos.gr.jp/asset/anchor_screw_guideline_02.pdfを読んだけど実際に知識が身についているか確認したい。という歯科医師の先生に向けた問題演習です。各設問に〇✖形式で回答する形式です。ページの最後に正答があるので、自分の理解度を確認してみてください。私もいくつか正答と違うところもありましたが、理解する、確認するためのツールにお役立てください。

矯正歯科の先生だけでなく、口腔外科、形成外科の先生も今回の問題演習は確認の上で有意義となれば嬉しいです。もちろん歯科矯正用アンカースクリューガイドラインに興味があるかたもご覧ください。

歯科矯正用アンカースクリューガイドライン第2版 問題演習

Ⅱ.本論

Ⅱ-1.アンカースクリュー

1 セルフタッピング式と比較してセルフドリリング式の方が骨への接触率が高い傾向がある

2 スクリューの長さは埋入する部位の粘膜軟組織の厚みは考慮する必要がある。

3 アンカースクリューの埋入部位として上顎口蓋側歯槽部は適している。

4 アンカースクリューの埋入部位として下顎第一大臼歯近遠心頬側歯槽部は適している。

Ⅱ-2.植立部位の選択と診査

Ⅱ-2-1.植立部位の解剖学的検討

1 上顎歯槽部の埋入部位は第一大臼歯近遠心頬側が推奨されている。

2 若年者に対して正中口蓋縫合への埋入が推奨されている。

3 口蓋領域へのアンカースクリューの植立は解剖学的な損傷リスクが少ない。

4 前歯歯槽部へのアンカースクリュー植立に適切な部位は側切歯と犬歯の間である。

Ⅱ-2-2.植立部位の術前診査

1 アンカースクリュー植立部位の選択にはあらゆるエックス線検査が有効である。

2 アンカースクリューの植立部位の皮質骨の厚さは1mm未満で十分である。

3 粘膜厚さの計測において注射針を用いてはならない。

4 上顎臼歯部頬側への植立を行う場合、歯槽頂から上顎洞底まで6mm以上必要である。

Ⅱ-3.植立術式

Ⅱ-3-1.植立の準備

1 アンカースクリューの製品はすべてオートクレーブにより高圧蒸気滅菌がほどこされている。

2 アンカースクリューの表面は手指で触れないようグローブで触れる。

3 アンカースクリューは再滅菌、再使用してはならない。

4 アンカースクリューは医薬品医療機器法クラスⅢに属している。

Ⅱ-3-2.植立の術式

1 セルフタップ型スクリューは誘導孔を形成することなく、ドライバーを用いて直接アンカースクリューを骨内に捻じ込む。

2 皮質骨が厚い部位はアンカースクリュー破折の危険があるため誘導孔を形成する。

3 アンカースクリューを傾斜させて植立すると、動揺度が増加する。

4 スクリューの歯根接触で植立時のトルクが高くなる。

Ⅱ-3-3.使用後の器械器具の処理

1 植立に使用した器具は、水洗いを行った後オートクレーブによる高圧蒸気滅菌を行う。

2 感染症患者に使用した場合は、流水下で水洗いした後、グルタラール製剤に浸漬し、オートクレーブでの滅菌を行う。

3 オートクレーブでの滅菌は、超音波洗浄機での洗浄のあとである。

4 洗浄・滅菌の操作過程における医療従事者への感染防止も考慮する。

Ⅱ-4.アンカースクリューを用いた歯の移動メカニクス

1 治療期間の短縮ができる

2 スライディングメカニクスによる上顎前歯部の舌側移動で、フックの長さで移動様相は変わらない。

3 下顎大臼歯遠心移動限界は、下顎体の舌側皮質骨までである。

4 上顎大臼歯のみの圧下では、下顎臼歯に提出防止をはかる必要がある。

Ⅱ-5.植立後の取り扱い

1 皮質骨の厚み、アンカースクリュー植立時のレジスタンスやトルクが十分である場合1週間後に矯正力を適用できる。

2 若年者へのアンカースクリューを用いた矯正では即時牽引しても問題ない。

3 アンカースクリューへの矯正力は2N程度までが望ましい。

4 アンカースクリュー植立後1~3か月の治癒期間をあけることが望ましい。

Ⅱ-6.植立後の口腔衛生管理

1 感染はアンカースクリュー脱落の原因とはならない。

2 アンカースクリュー植立時に上顎洞への穿孔を起こした際は抗菌薬の処方を行う。

3 アンカースクリューは硬い毛の歯ブラシで周囲の歯と同様にしっかりと清掃する必要がある。

4 口蓋正中部への植立はアンカースクリュー頭部が粘膜から0.5mm程度浮いた状態にすることが推奨されている。

Ⅱ-7.撤去術式

1 アンカースクリューの撤去は痛みを伴うため、強い麻酔が必要である。

2 アンカースクリュー撤去後の軟組織は通常瘢痕を形成することはない。

3 アンカースクリュー撤去後時のトルクは小さい。

4 撤去は電動ドライバーリバースモードのトルク制限なしで行う。

Ⅱ-8.保定と予後

1 アンカースクシューを用いた歯の移動は従来の矯正治療と同等の保定期間を要する。

2 上顎大臼歯圧下が達成された後、保定期間中3年間で27.2%の後戻りが認められる。

3 上顎大臼歯圧下が達成された後、保定期間中3年間のうち、後戻りの量は最初の2年間で全体の80%生じる。

4 下顎大臼歯圧下の治療を行った後、保定期間中1年間で第一大臼歯において22.88%の後戻りが認められた。

Ⅱ-9.リスクと対策

1 アンカースクリューの合併症として、骨・粘膜の過形成がある。

2 アンカースクリューを植立しても神経や血管が傷つく心配はない。

3 アンカースクリューを植立する前にはエックス線による解剖学的精査や皮質骨の厚さを計測することが重要である。

4 アンカースクリュー植立後には投薬をする必要が全くない。

Ⅱ-9-1.植立時のリスクと対策

1 アンカースクリュー植立前にはCTを撮影することが望ましい。

2 アンカースクリューを傾斜させて植立することはない。

3 アンカースクリュー植立時に歯根を損傷しても、アンカースクリューを撤去する必要はない。

4 皮質骨が厚い下顎骨では予め誘導路を形成してから植立することで不要なトルクを除去できる。

Ⅱ-9-2.植立後のリスクと対策

1 アンカースクリュー植立の合併症としてアフタ性口内炎がある。

2 アンカースクリューを可動粘膜に植立した場合アンカースクリュー周囲炎が起こりやすい。

3 アンカースクリュー植立後、即時牽引を行う場合の負荷は150~250g程度にするべきである。

4 アンカースクリューに動揺が見られても、しばらくすれば再度安定する。

Ⅱ-10.滅菌・消毒・保管・廃棄について

1 アンカースクリューは医療品医療機器法に基づくクラスⅠにあたる器材である。

2 すべての製品は使用前に滅菌処理が必要である。

3 ハンドドライバーはオートクレーブ使用不可である。

4 感染者に使用した機器はグルターラル製剤を併用する。

Ⅱ-11.アンカースクリューの植立に影響する全身のリスクファクター

1 小児へのアンカースクリュー使用は原則禁忌である。

2 糖尿病患者へのアンカースクリュー使用は原則禁忌である。

3 口腔内乾燥症患者へのアンカースクリュー使用は禁忌である。

4 妊婦へのアンカースクリュー使用は禁忌である。

Ⅱ-12.施設基準と術者の資格

1 安全な植立のために、十分な診断機器が必要であることから、CT等の3次元診断が可能な機器を使用しない場合は埋入してはならない。

2 公益社団法人日本矯正歯科学会が定める矯正科基本研修、臨床研修等を修了した日本矯正歯科学会認定医でなければ埋入してはならない。

3 当該製品を用いた矯正治療に関する教育研修セミナー等を受講し、研鑽を行なった歯科医師であれば埋入可能である。

4 計画した施術部位に神経、血管、上顎洞などが近接している場合では、他科との連携が非常に重要である。

Ⅱ-13. 歯科矯正用アンカースクリューの保険導入

1 アンカースクリューを保険で植立することはできない。

2 歯科矯正用診断料を算定した保健医療機関でなくてはアンカースクリュー植立の保険点数は請求できない。

3 アンカースクリューが脱落した場合に再植立を行った場合、植立の費用は算定できないが特定保健医療材料は算定できる。

4 使用できるアンカースクリューは薬事承認され、特定保健医療材料となっているものに限られる。

Ⅱ-14.教育研修

Ⅲ.アンカースクリューを用いた顎整形的アプローチ

Ⅳ.歯科矯正用アンカープレート(仮称)について

1 歯科矯正用アンカープレート(仮称)の適応症に、骨格性開咬がある。

2 アンカープレートの埋入部位は歯槽部に行う。

3 アンカープレートの使用に際し、起こり得る不具合に骨との癒着がある。

4 アンカープレート使用に際し、十分な口腔衛生指導を行わなければならない。

歯科矯正用アンカースクリューガイドライン第2版 回答

Ⅱ.本論

Ⅱ-1.アンカースクリュー 1 〇 2 〇 3 〇 4 〇

Ⅱ-2.植立部位の選択と診査

Ⅱ-2-1.植立部位の解剖学的検討 1 〇 2 ✖ 3 〇 4 〇

Ⅱ-2-2.植立部位の術前診査 1 〇 2 ✖ 3 ✖ 4 〇

Ⅱ-3.植立術式

Ⅱ-3-1.植立の準備 1 ✖ 2 ✖ 3 〇 4 〇

Ⅱ-3-2.植立の術式 1 ✖ 2 〇 3 ✖ 4 〇

Ⅱ-3-3.使用後の器械器具の処理 1 〇 2 ✖ 3 〇 4 〇

Ⅱ-4.アンカースクリューを用いた歯の移動メカニクス 1 〇 2 ✖ 3 〇 4 〇

Ⅱ-5.植立後の取り扱い 1 〇 2 ✖ 3 〇 4 〇

Ⅱ-6.植立後の口腔衛生管理 1 ✖ 2 〇 3 ✖ 4 〇

Ⅱ-7.撤去術式 1 ✖ 2 〇 3 〇 4 ✖

Ⅱ-8.保定と予後・ 1 〇 2 ✖ 3 ✖ 4 ✖

Ⅱ-9.リスクと対策 1 〇 2 ✖ 3 〇 4 ✖

Ⅱ-9-1.植立時のリスクと対策 1 〇 2 ✖ 3 ✖ 4 〇

Ⅱ-9-2.植立後のリスクと対策 1 〇 2 〇 3 〇 4 ✖

Ⅱ-10.滅菌・消毒・保管・廃棄について 1 ✖ 2 ✖ 3 ✖ 4 〇

Ⅱ-11.アンカースクリューの植立に影響する全身のリスクファクター 1 ✖ 2 〇 3 〇 4 ✖

Ⅱ-12.施設基準と術者の資格 1 ✖ 2 ✖ 3 〇 4 〇

Ⅱ-13. 歯科矯正用アンカースクリューの保険導入・ 1 ✖ 2 ✖ 3 〇 4 〇

Ⅱ-14.教育研修 Ⅲ.アンカースクリューを用いた顎整形的アプローチ

Ⅳ.歯科矯正用アンカープレート(仮称)について 1 〇 2 ✖ 3 ✖ 4 〇

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